「年間手取りキャッシュフロー100万円以上!」「表面利回り8%!」
不動産会社から提示される、夢のような収支シミュレーション。しかし、その数字を鵜呑みにしていませんか?
多くの場合、それらの資料は、投資家にとって不都合なコストが意図的に省かれた「販売用の甘い資料」です。この記事では、高額な分析ツールやコンサルタントに頼ることなく、ChatGPTのような生成AIをあなたの「専属アナリスト」として、冷静な収支シミュレーションを自作する具体的な手順を、コピペで使えるプロンプト付きで解説します。
【第1章】なぜ業者のシミュレーションは「甘い」のか?- 隠された4つのコスト
まず、なぜ業者のシミュレーションが現実と乖離しやすいのか、その構造を理解しましょう。主に、以下の4つの項目が意図的に無視、あるいは極端に楽観視されているケースがほとんどです。
- 空室率と家賃下落率 30年もの間、常に満室で家賃も下がらない、という前提になっていませんか?現実には、入居者の退去による空室期間や、経年による家賃の下落は避けられません。
- 大規模修繕費 外壁塗装や屋上防水など、10〜15年に一度は必ず発生する数百万円単位の大きな出費です。これが考慮されていないと、ある年を境にキャッシュフローが急激に悪化します。
- 原状回復費・広告宣伝費 入居者が入れ替わる都度、部屋を綺麗にするための原状回復費や、新たな入居者を募集するための広告費(AD料)が発生します。これも見落とされがちな重要なコストです。
- 金利上昇リスク 変動金利でローンを組む場合、将来の金利上昇は返済額に直結します。金利が低いままであることを前提としたシミュレーションは非常に危険です。
これらの要素を無視すれば、どんな物件でも「儲かる物件」に見せかけることができてしまうのです。
【第2章】準備するもの – AIと「冷静なデータ」
シミュレーションを始める前に、2つの武器を準備します。
1. AIツール
ChatGPT(GPT-4モデル) を推奨します。特に、ファイル読み込みやデータ分析、グラフ作成が可能な有料のPlusプランが理想です。無料版でも基本的な計算は可能ですが、より高度で正確な分析のためには有料版の価値は絶大です。
参考:OpenAI公式サイト
2. 冷静なデータ
AIにインプットするための、現実的な数値データが必要です。物件資料(レントロールや販売図面)に記載の情報に加え、以下のデータを自分でリサーチして準備しましょう。
- 物件情報: 物件価格、構造、築年数、総戸数、専有面積
- 家賃情報: 現在の想定家賃収入(年額)
- ローン情報: 借入額、金利(当初・将来の見込み)、返済期間
- 経費情報: 管理委託費、修繕積立金、固定資産税・都市計画税
- 現実的なリスク(自分で調べる):
- 家賃下落率: 近隣の類似物件の築年数ごとの家賃を参考に設定(例: 2年に1%下落)
- 空室率: 対象エリアの平均空室率を統計データ(JLL, CBREなど)で確認(例: 8%〜10%)
- 大規模修繕費: 国土交通省のガイドラインなどを参考に設定(例: 12年ごとに1戸あたり100万円)
- 原状回復・広告費: 家賃の1〜2ヶ月分が2〜3年ごとにかかると想定
【第3章】【コピペでOK】AIにシミュレーションを依頼する「魔法のプロンプト」
準備ができたら、いよいよAIに仕事を発注します。以下のテンプレートをコピーし、[ ]
の部分をあなたが集めたデータに書き換えて、ChatGPTに貼り付けてください。
あなたは優秀な不動産アナリストです。以下の条件に基づき、私が検討している不動産投資案件について、30年間のキャッシュフローシミュレーション(年間)を詳細に実行してください。
# 物件情報
* 物件価格:[6000万円]
* 構造・築年数:[RC造・築15年]
* 総戸数:[10戸]
# 収入に関する情報
* 想定満室時家賃収入(年額):[480万円]
# ローン情報
* 借入額:[5500万円]
* 金利:[当初1.5%(10年固定)、11年目以降は2.5%の変動金利と仮定]
* 返済期間:[30年]
* 返済方法:[元利均等返済]
# 経費・リスクに関するシミュレーション条件
* 家賃下落率:[2年に1%ずつ下落するものと仮定]
* 空室率:[常に満室時家賃収入の10%と仮定]
* 管理委託費:[家賃収入の5%]
* 修繕積立金:[月額10万円(年額120万円)]
* 固定資産税・都市計画税:[年額40万円]
* 原状回復費・広告宣伝費:[3年ごとに家賃収入の10%が発生すると仮定]
* 大規模修繕費:[12年目と24年目に、それぞれ600万円の特別支出が発生すると仮定]
* 所得税・住民税の実効税率:[キャッシュフローに応じて20%と仮定]
# 出力形式
1. 年間の「満室時家賃収入」「空室損失・家賃下落」「実質的な家賃収入」「経費合計」「ローン返済額(元本・利息)」「税引前キャッシュフロー」「税金」「税引後キャッシュフロー」をまとめた表を30年分作成してください。
2. 税引後キャッシュフローの30年間の推移を折れ線グラフで可視化してください。
3. このシミュレーション結果に基づき、この投資案件の潜在的なメリットとリスクについて、アナリストとして簡潔に分析してください。
【第4章】AIの回答を分析し、「ストレステスト」を行う
AIは上記プロンプトに基づき、詳細な表とグラフ、そして簡単な分析を出力してくれるはずです。しかし、ここで終わりではありません。本当の価値は、AIとの対話による「ストレステスト」にあります。
AIが出した結果に対して、以下のような追加質問を投げかけてみましょう。
- 「ありがとうございます。素晴らしい分析です。では、もし11年目以降の金利が3.5%に上昇した場合はどうなりますか?同様の表とグラフを更新してください。」
- 「最初の5年間、経済状況の悪化で空室率が25%になった場合のシミュレーションを見せてください。」
- 「もし20年後に、購入価格の70%の価格でしか売却できなかった場合、売却時の税金(譲渡所得税)を考慮した上での、30年間のトータルリターン(内部収益率IRR)を計算できますか?」
これらの対話を通じて、あなたは物件が持つ「不確実性への耐性」を具体的に把握することができます。
関連記事:不動産投資家なら絶対活用したい!AIツール5選【2025年最新版】
【まとめ】
AIを使えば、あなたは業者からデータを与えられるだけの受け身の存在から、自らデータを分析し、リスクを洗い出す能動的な投資家へと進化できます。
重要なのは、AIに「一つの正解」を求めるのではなく、様々なシナリオを試すことで「起こりうる未来の範囲」を立体的に理解することです。この「AIシミュレーション」という強力な武器を手に、ぜひ、誰かの言葉を鵜呑みにしない、賢い投資家としての第一歩を踏み出してください。
参考:【究極のシミュレーション】1000万円で不動産とビットコイン、どっちが儲かる?30年後の資産をAIと徹底比較
【免責事項】 本記事で提供するプロンプトやシミュレーション結果は、あくまで一例であり、その正確性を保証するものではありません。AIの出力は、入力されたデータや前提条件に依存します。実際の投資判断は、ご自身の責任において、必要に応じて不動産の専門家や税理士にご相談の上で行ってください。
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